綾の夫ジャムル君は、お店に謝罪し持ち逃げしたお金を返したあと、警察に出頭した。だけど店長が起訴しなかったので、刑務所には入らずに済んだらしい。
そして綾は伊織君から両親が遺したお金の半額を受け取り、綾たち夫婦はまたインド料理店で働きだした。自分達を許してくれた店長に恩返しするために。
私と伊織君は相変わらずあの家で二人で仲良く住んでいて、週に一階、綾たち親子と一緒に食事をしている。
大阪の東さんにはちゃんと電話した。
綾が帰ってきましたよ、それに、何と娘までいるんですよ~って。
東さんは大興奮で、これで水谷も喜ぶだろうって電話の向こうで泣いたらしい。どうやら綾たちのご両親の友人で、彼らが事故死したあと、水谷家の子供達は自分が面倒をみるって決めていたそうだ。
だから本当は伊織君のことも知っていた。
葬式で初めて会ったらしいが、伊織君はたくさんいる大人達の一人一人など覚えておらず、それならそれでと初対面を装ったと話した。
飲みに連れ出したのは私のことでクギをさすのも目的ではあったそうだが、友人の忘れ形見と一緒に飲む、そのことの方が大事な目的だったらしい。
「そうだったら言えばいいのに・・・」
後でその話を聞いた伊織君は呆れたようにそういったけれど、きっと東さんは照れていたんだろうと綾が言った。
「ガンガン言いたいことを言ってるように思えるけど、ほんと照れ屋さんなのよ、東さんって」
私は伊織君の肩を叩く。
「今度香織ちゃんを見にくるって言ってたよ。また一緒に飲みに行けばいいんじゃない?」



