長い夜には手をとって



 何が原因で道が変わるか判らないけれど、もし私が美容師になっていたら、綾とは出会わなかっただろうな、って。働かなきゃならないってなった時には神様を恨んだりもしたけれど、結局は素晴らしいプレゼントだったのかもしれない。

 私も、ラッキーだ。

 食卓を囲む頃には夜の10時になっていた。水谷姉弟が一緒にいるところを見るのが初めてで、私は彼らと食卓につきながら、ついしみじみと眺めてしまう。

 伊織君の動作や笑顔に綾を感じることはよくあったけれど、じっくりと眺めたら、当然だけどやっぱり違う人間だった。

 雰囲気は似ているし、口元が同じだ。だけど、あとは違う。きっと父方か母方かってことなんだろうけど。うーん・・・面白いなあ!

「そんなしみじみと見詰めないで、凪子さん。今は邪魔者がいるからさ、素直に喜べないんだ」

 伊織君がそう言うと、綾が隣から手を出して頭を叩いた。

「痛っ!」

「だーれが邪魔者なのよ。それはあんたでしょ!折角凪との感動の再会なのに・・・もう」

「あのね、俺達夫婦だからね。姉貴は自分のダンナといればいいだろ」

「お黙り!名義はあんたになったとしても、やっぱりここは私と凪の家なんだから」

「違うっつーの」

 やいやいと言い合う二人を見て、私は笑う。ようやく全部が完成した、そんな気がしていた。嬉しくて、お酒もすすむ。授乳があるからとお酒を断った綾が、そういえば、と私を見た。

「あんた達、子供はまだなの?いつ結婚したっていったっけ?」

 ぶっと私はビールを噴出しかける。・・・ちょっとちょっと、お姉さん!