長い夜には手をとって



「ここを出て、空港にいって飛行機の空き待ちをしていた時に、ふと思いついたの。あ、伊織に電話しようって。あの子の今の状況を知らなかったからどうするかは判らなかったけど、もしかしたら凪に会いにいってくれるかもって。試しに電話してみたら、運よく捕まえられてさ。正解だったな~、ほんと」

 ふふふと綾は笑う。私は若干呆れながら、サラダをボウルで混ぜていた。・・・いやいやいや、正解だったって、あんたね・・・。

 料理を作りながら、結婚を決めた時の話をする。綾には婚約者がいて、両親が亡くなると同時に破棄されたってことも。綾はちょっと悲しそうな顔をしたけれど、割とさばさばと話し出した。

「両思いで、愛で繋がってるって思ってた、高校生の頃ね。大学には花嫁修業のつもりで行っていたし、だから、私は堂本の財産を継いでいないし、外交官の両親も死んでしまったって判明した時に、いきなり冷たい声で電話してきた彼に、ビックリした。結局後ろ盾が欲しかっただけなんだよね。あの人は私のことなんかお金の次としか見てなかった。私はそれが判ってなかったのよ」

 だけど、と綾は手を動かしながら私を見て笑う。

「そのせいで働くことになったのは、今では感謝してる。だってあんたに会えたしね。ラッキーだった。ほんと家族みたいだったよね、私達。東さんとかね、葬式の時に連絡先を渡してくれてたの。だからこの家だって手配してくれたし、婚約破棄のあとはボロボロだったんだけど、私の人生ってそんなに悪くないよなあ~って思えた。それで、凪と騒がしく暮らして、ジャムルと会って・・・。本当に人を好きになるってことがどういうことかも判ったしね」

 ラッキーラッキーと節をつけて、綾は歌うように言う。

 私もそう思った。