長い夜には手をとって


 帰ってきたときには酔っ払っていたし、綾はもう寝たのだと思って私もすぐに寝てしまったんだった。

「私も現金は10万ちょっとしか持ってなかった。二人の飛行機代でそれは消えてしまう。それで、私は凪のお金を、彼は店のお金を盗りにいったの。インドにいってからの移動費としばらくの生活費に。犯罪者になってしまうってことは、ちゃんと判ってたよ」

 綾が立ち上がって、私に近寄る。とても静かな表情をしていて、彼女はじっと目を合わせていた。

「だから、ごめんね、凪。あのお金のお陰で助かった。彼のお母さんの最期には間に合わなかったけれど、葬式はちゃんとしてあげれたの」

 私は言葉が戻らないままで、彼女を見詰める。・・・そんなことが、遠い国であったなんて。

 その時、綾にソファーから追い払われて台所の食卓に移動していた伊織君が、ヒョイと口を挟んだ。

「――――――で、その彼はどこにいるんだ?姉貴とこの子だけで日本に戻ったのか?」

 二人とも一緒に伊織君を見た。あ、居たんだ!?って感じで。実際のところ、少しだけ彼の存在を忘れてしまっていた。

 伊織君はそれがわかったらしい。憤然とした顔をする。

「あ、ジャムルはね、お店に行ってるの。あっちのお金を返しにね。店長が許してくれるかは判らないけれど、二人で必死で働いて、彼の兄弟達も手を尽くしてくれて、別に外国で働いている親戚の人からも仕送りがあって、葬式代は返してくれたの。だから、ちゃんと全額持ってきたんだよ」

 綾がそう言って、私に笑いかける。そして、持ってきた鞄から、ビニール袋の包みを出した。