それに、そうだ、東さん!だってあのおじさん・・・そんなことを!?伊織君を飲みに連れ出したのは、クギをさすためだったなんて。娘のようだって言ってくれていたのは、嘘ではなかったんだ・・・。私はちょっと涙ぐみさえしそうだった。

「東さんたら優しい・・・」

「うん、本当そうだよね。・・・だから、今日の朝、電話したんだよ。東さんに、俺もう我慢出来そうにありませんって。だから凪子さんに当たってみて、玉砕したら家を出ますって。そしたら話を聞いて、東さんが言ったんだ」

『あんたも男やったら、ドーンとぶつかってバシッと決めてこんかいな!欲しいもんは欲しいって言うんや。ほんでちゃあーんと手に入れて、それから後のこと考えたらええ!』

 そう言ったらしい。

「え、だって東さんがそれはダメだって・・・」

 言ったんだよね?クギをさされたんだよね?私がついそういうと、伊織君がケラケラと笑う。

「俺もそう思って、それを止めてたのは誰でしたっけ?って聞いたんだよ。そしたらケロッとしてさ、あんなのはあんたの真剣度を試しただけやー、だって。気軽に手を出していい女の子ちゃうから、ほんまに大事に思うようになるまではあかんって意味や!って。最後はもう大きな声でさ。『キバれよ~っ!!』って叫ぶんだ。耳がつぶれるかと思った」

 ・・・東さんたら。

 私もついに笑ってしまう。本当に、なんて人なの、オーナー!