「一緒にご飯食べてきた?そんで、元通りに仲良くなってきたとか?」

「えっと・・・」

「やっぱりあの人が好きなんだ?もしかして、プロポーズとかされたりした?」

 このままではいけない・・・いけないよね?!私は右肩に重みと痛みを感じつつ冷や汗を出しながら、小さな声で話しだした。

「・・・あの・・・違うんだよ。ちゃんと断ってきたの。復縁の、話を」

 ぴたっと伊織君が止まった。

 私はドキドキと煩い心臓を無視するように努めて、深呼吸をする。

「それに、ご飯は一人で食べたんだよ。ちゃんと吹っ切れたことを、一人でお祝いしようと思って・・・ワイン飲んで」

 私はやかんの火を止めて、ゆっくりと振り向く。伊織君は外された頭を上げて両手をジーンズのポケットに突っ込み、目を細めて立っていた。

 切ない目だ。そう思った。泣きそうで、苦しそうで、感情が溢れ出すような。彼は、とても切ない表情をしている。

 その顔を見ていたら、突然、暴力的な気持ちが湧き上がってきたのを感じた。それに突き動かされるように、気がついたら私は言っていた。

「・・・伊織君が好きだから」

 シンクに腰を引っ付けて、私は彼を見上げる。

「あの人じゃなくて、君が好きだから」