弘平と出会ってから色々あったこと、そして別れてからあったことも全部、すっきり解消したような気分になって心が弾み、私は途中で晩ご飯を食べてから帰宅することにした。

 駅中にあるカジュアルなイタリアンレストランで一人でワインで乾杯したのだ。普段は注文しない値段のスパゲティーと、サラダをとって、赤ワインを飲んだ。

 流されず、ちゃんと過去と決別!弘平を傷つけてしまっただろうことは心苦しいが、あのまま二人でやり直しを決めてたら前よりももっと酷い事になったかもしれない。

 自分達の本音を誤魔化したままで、二人ともお互いをもっと傷つけることになったかもしれない。だからこれで良かったのだ。

 よく頑張った、私。

 気分も軽く、ほろ酔いで上機嫌だった。

 そしていつものように駅から自転車で家まで疾走して家に帰る。夜も9時になっていた。

「・・・あれ?」

 玄関を開けてまず目に入った大きな靴に、私は驚いた。

 え!?伊織君、もしかして帰ってるのー?

 電気はついていた。暖房も。玄関入ってすぐの居間、それから続き間の台所。だけど彼の姿はない。洗面所のドア窓にも明りはないし、お風呂ではなさそう。ということは、自分の部屋?

 とにかく伊織君が私が起きている時間に家にいるということが、あまりにも久しぶりすぎて驚いたのだ。

 あの夜、彼が私に話しついでに告白する羽目になって以来、伊織君は徹底的に私を避けていたようだったから。