お箸を止めてしまった。やっぱり変だって思ってましたか、ううーん、どうしようかな・・・。今話すべきなのか。

 ちょっと悩んだけど、あと少しのご飯を片付けてしまうことにする。話しだしたら絶対食欲はなくなるはずだから。

 無言のまま片付けて、やっと一息ついて椅子にもたれかかる。

「あー、美味しかった。汗でちゃったな」

 伊織君がそう言って笑う。私はパッと視線を外してしまった。笑顔を見るのは、ちょっときつくて。何となく気詰まりで、立ち上がって食べ終わったアルミ鍋を二人分流しに運んだ。

「・・・んー。やっぱり何か変だな。どうした?」

 後ろから、伊織君の低い声。

 私はため息をつくのを我慢して、流しを見下ろしながら言った。

「伊織君ね、もしかして、無理してここに住んでない?」

 返事がなかった。だから私は思いきって振り返る。すると、椅子に腰掛けて片肘をつき、ぽかんと口を開ける彼がいた。

 どうやら呆気に取られているようだ。

「・・・は?」

 そして驚いてもいるらしい。

「え、ちょっと待って。一体どうしてそんな話になった?俺、別に無理に住んでないよ。そんな風に見えた?」

 見えなかった。私は心の中で呟く。だから、そうかもしれないと思った時に、余計に傷付いた。

「本当に?綾に・・・綾のやったことで、仕方なしにここに住んでるのかなって。無理してるとかじゃなくても、えーっと、もし諦めの感情でやってくれてるならそんな必要ないって言いたかったの。ここに住まなくても問題ないし、なんなら家賃の負担だってもう十分だから―――――――」