藍色だって思うのだ。

 人生ってね、色んな例え方をされるけれど、私は「青系の色」の繋がりだって思う。

 深いブルーになったって、真っ黒ってわけではない。たまに楽しいことや嬉しいことなんかがやってきて、ちょっと白色が足される。ゆらゆらと、明るさに近づいたり暗さに近づいたりするの。

 私達はその藍色の中を泳いでいっているんだよね。

 がむしゃらか、流れに身を任せるのかは人によって違うけど、泳いでるって、いつも思う。

 いつも、藍の中を。





 襖がとんとんと叩かれて、廊下から伊織君の声が聞こえた。

「凪子さん、起きてる?」

 私は枕元の携帯で時間を確認した。9時半。今晩は早く帰ってきたようだ。布団から起き上がって、うんと言う。

 襖が開けられて、伊織君が顔を出した。自動的に彼の口元に目が行ってしまう。ダメダメダメ・・・!あのキスは忘れるんでしょ!

 露骨にならないように視線を外して布団カバーの柄を見詰める。

「熱はどう?」

「うん。マシになったよー。多分、今は微熱くらい。今日は早かったんだねー」

「先生が早く帰れって言ってくれてね。ご飯何か食べた?」

 私は首を振る。頭痛はなかったし、体も軽くなったようだった。

「鍋焼きうどん買ってきたんだけど。一緒する?」

 お腹が鳴った。いいタイミングだと伊織君は笑う。私は照れてお腹をさすりながら、頷いた。

「ありがとう、頂きます」

「じゃあ気をつけて下にきてー」