「いえ、あなたの分もです。そうしたら、あなたはまた貯金が出来るでしょう?一気には払えないけれど、毎月あなたの分も俺が負担すれば、ちょっとづつでも返済してることになるかな、と」
・・・あ、成る程。
私はようやく彼のいわんとすることを理解して、ほっと息を吐き出した。
「えーっとつまり、あなたはこの家の家賃と光熱費を負担してくれる。だけど仕事であまり家にいないってことよね?」
うん、と彼は前で頷く。
「塚村さんは今まで通りの生活をして下さい。俺はたまに日本にいる間は勿論帰ってはきますけど、時間はバラバラで帰宅が朝や昼だったりもしますから、時間帯が違い過ぎて滅多に会わないと思うし。そうしたら、とにかく姉が持ち逃げした分を返していけるし、俺は誰もいない部屋の家賃を払わなくて済む。あなたはここを出なくて済むし、当面お金の心配は消える、だよね?」
思わず頷いてしまった。
確かにそうなのだ。
綾のことは心配だし、ムカつきもしている。だけどとにかくこのままではこの家には住めないし、出ていくところもなければ引越し資金もない。私には有難い話なのだった。それに男と住むということではあるが、彼は普段いないようだし――――――――――・・・
うーん、と唸る私を見ながら、彼は涼しい顔でコーヒーを飲んでいる。言いたいことは言ったから、後は任せる、そんな雰囲気で。
口元に手をあててままで熟考すること5分ほど。その内に、前の男性が、あ、と声を出した。
「あのーちなみに、ここの家賃はいくらですか?」



