「・・・えっと・・・え?」
伊織君のことについ反応する。望まない同居って・・・何よ、それ。話さないぞと決めたのも忘れて、つい口を出してしまった。
「いや、同居はあっちからの話だったんだよ?私が無理言ったわけじゃなくて―――――――」
弘平は苦笑した。
「それでもさ、相手は弱みがあるわけだろう。自分の家族がしたことに。ナギにそんなつもりがなかったって、綾さんの弟さんにとっては選択の余地がないことなんじゃないか?別に女性じゃなくても知らない人と古い家で一緒に住むっていうのは、覚悟がいることだと思うぞ」
俺だったらやっぱり嫌だね、そう続けて言って、弘平は私に笑いかける。
「ナギがまた俺に惚れてくれるように、頑張るから。もうあんな風に傷つけないから。また俺のものになってくれないか?大事に、するから」
頭が混乱してきて、私はちょっと待ってと片手を前に出す。
弘平と同棲?そうなると、確かにお金には困らない・・・。だけど、あの家から出る?あの、家から。それに伊織君は望んでない同居?本当にそうなのかな、姉のせいで仕方なく私と一緒に・・・?だけど、そもそも同居を言い出したのは伊織君だし、そんな、まるで私が弱みを強請ったみたいに――――――――ああ、もう。何が何だか判らない!
「ど、同棲って・・・いきなりあなたと一緒に住むの?」
パニックを起こした私がそう口走ると、弘平は微かに首を傾げる。
「今なんか、よく知りもしない男と一緒に住んでるんだろ?」
「そっ・・・それは、そうだけど、でも」