私が嫌そうな顔で見たからだろう。弘平はちょっと焦ったような声で、色々と言い訳もした。それからコホンと空咳をついて、真面目な顔を見せる。

「とにかく、それで話が判ったんだ。綾さんがお前のお金を持ち逃げしてしまって、その返済で弟が来たってこと。家賃を負担してくれてて一緒に住んでるってことも。だから、俺はいい解決策を思いついた。皆が幸せで、丁度いい解決案を」

 本題にきたらしい。

 私は緊張して、助手席で窓際に体を押し付ける。

 外の景色はもう私の家近くだったけれど、弘平は一度車を道路の端に寄せて停めてしまう。それから私に体を向けて、言った。

「ナギ、俺のところに来いよ」


 ―――――――――は?


 頭の中には、巨大なハテナマークが出現した。

 私は両目を見開いたままで首を傾げる。

「―――――どうしてそうなるの?」

 弘平は珍しく、ちょっと照れた顔をして頬を爪で掻いた。

「俺はお前とまた付き合いたい。お前には彼氏はいないらしい。で、金がないから家賃を同居人に負担して貰ってる、だろ?」

 確認を取るように聞かれたので、思わず頷いてしまった。弘平はそれを見て、笑顔を浮かべる。

「なら俺と一緒に住もう。俺の部屋が嫌なら引っ越せばいい。もうちょっと広いところに。新しいマンションを買ってもいい。俺は会社員ではないけど毎月ちゃんと稼いでるし、お前一人養うことは簡単に出来る。そしたら、お金の問題は解決するし、綾さんの弟さんも望まない同居から解放されるだろ?」