話が判らなくて、私は眉間に皺をよせる。何言ってるの、この人?

 高速道路は使わずに、下道で送ると決めたようだった。渋滞が発生しつつある道路をスピードを落として進みながら、弘平が言う。

「お前が男と同棲してるって菊池さんに言ったら、菊池さんが真っ赤になって怒ったんだ。塚村さんをそんな軽い女みたいな言い方しないでーって。普通に聞いても誤魔化されそうだったからわざと言ったんだけど、かなり怒ってたよ、菊池さん。いい人だよなー」

「・・・それ、前に聞いたわ。話ちゃってごめんねって菊池さんに謝られた。どうしてそんなことしたの?」

 うんざりして私は聞く。誤解したのはあなたでしょうが。そのまま放置でよかったものを。可哀想なのは、巻き込まれた菊池さんだ。

「お前のことが知りたかったから」

 弘平がさらっと返す。私は一瞬言葉を失った。何て言っていいのか判らなくて。

「ショックだったんだ。他の男と一緒にいるナギを見たのが。相手はどうみてもお風呂上りだったし、一緒に住んでんだよな、って。仕方ないから忘れようって思ったんだよ、勿論。だけど久しぶりに会ったナギを見て心惹かれたし、話すとあの頃を思い出して・・・やっぱり、俺はナギといるのが心地いいんだ、って思って」

 ここで下手に口を開けると、いつも変な動揺が始まってしまって相手のペースになる!私は散々綾と話したことを思い出して、唇を噛んで黙っていた。

 何もいっちゃいけないのよ、凪子~!