彼女はご飯を食べながら、いかにプロポーズまでが長かったかを滔々と話す。私は笑いながらそれを聞いていて、だけど顔を赤くして話す彼女が可愛いなあ、と思っていた。
「30歳までに結婚が子供の時からの夢だったの!ギリギリだけど間に合うわ~」
「あ、そうか。菊池さん今年29歳だもんね。式はどこでやるの?」
「もう近場でって思ってる。どっちの実家も近いし、リゾート婚も憧れるけど、予算もあるしねー。ねえねえそういえば、塚村さんはどうなの?1月のさ、津田さんのお祝い会で、加納さんと再会したじゃない!?」
私は途端に真顔に戻った。
・・・弘平。すっかり忘れていたのに、もう。
「いやいや、何もないよ。元カレとたまたま会いました、それだけ」
「え、ホント?だけど加納さんはちょっと何かを感じたんじゃなーい?だって、そう!そういえばね、あの後たまたま私、おつかいの時に駅でバッタリ会ったの。その時、加納さんに塚村さんのこと聞かれたよ~」
「え?」
私は驚いて、菊池さんを見た。
「弘・・・加納さんと会った?駅で?それで、私の何を聞いたって?」
菊池さんは目をぱちくりさせて、不思議そうな顔で私を見る。
「えーっと・・・あ、綾さんのこととかよ。家まで送っていったけど、見なかったとか。それで、情報を探ってる感じが嫌だったし私も最初は関係ないでしょって思ったから話さなかったんだけど、塚村さんが男と同棲してるってまるで遊んでる女みたいに言うからさ、それはカチンときて、違うよって――――――――」
あら。
私は菊池さんの手を思わず掴んだ。



