「凪子ちゃんは悪いけど、一人でご飯食べて待っといてー。おっちゃんなりの入居審査してくるわな」
「え、ええ?あの、ええと」
「ほないこかー」
「はい」
私がわたわたとしている間に二人は靴を履いて玄関を出てしまった。
「あの、東さん!」
私が玄関から顔を覗かせると、オーナーはニカッと笑って手を振る。
「別にとって食いやせーへん。ほな、風邪ひかんようにしときや、凪子ちゃん。またあの子送って来るしな」
小さな東さんと大きな伊織君が歩いて行ってしまう。その背中はすぐに夜の中に紛れてしまって、もう見えなかった。
・・・入居審査?そんなのあったっけ?
私は呆気に取られて、しばらく玄関先でぽけっとしていた。
二人が家に戻ってきたのは、夜も11時を過ぎてからだった。
「・・・うっ!!くっさ~!」
玄関のドアを開けた私は思わずそう叫んで顔をしかめる。
二人はへべれけになっているようだった。オーナーの東さんはまだ自分で立ってニコニコしてたけれど、伊織君は家の前の狭い通路で、向かいの家のブロック塀にもたれかかって座り込んでしまっている。一体どれだけ飲んだのよ!?
「ちょっと伊織君、大丈夫~?!」
パジャマに半纏を羽織っていた私はつっかけを履いて外へ出る。



