「あれ?今日ももしかして宅配頼んでくれてるの?」

 私がそう聞きながら玄関へ向かうと、後ろから一緒についてきながら伊織君は首を振った。

「いや、今日の晩は俺が何か作ろうかなって思って――――――――」

 私ははーい、と声を出しながら手を伸ばしてたたきの上からドアを開ける。するとそこに立って玄関灯に照らされていたのは――――――――

「あ、東さん!」

 この家の、オーナーだった。

「やあ凪子ちゃん。元気しとったかー?ようやく戻ってきたさかい、こっち来たついでにお土産渡しに来たわ」

 にこにこと顔中で笑いながら、軽快ないつもの大阪弁で東さんはぺらぺら喋る。そしてふと私の後ろを見て、目を丸くした。

「お?ああ~、彼氏さん?来とったんかいな!そらおっちゃん邪魔したなあ!」

 私はここでようやく思い出した。

 そうだ!!

 綾からその弟である伊織君にハウスメイトが代わってるってことを、まだ言ってなかったー!!

「先に電話もせんと、ごめんやで!」

「あ、いえ、僕は―――――――」

 伊織君が言いかけるのに、私は手の平を見せて黙らせる。そしてオーナーに笑いかけた。少し、いやかなりひきつっていたかもしれないけれど。

「・・・とりあえず、上がってください。お話がたくさんありまして」