気が済むまでぼーっとしたあと、私はコップを流しに置いて、部屋の電気をつける。それから眠る伊織君に近寄っていく。さて、起こすべきか寝かせておくべきか。だけど運動もしてないし、このままだと夜眠れなくなっちゃうかも。やっぱり起こすか。とにかく、風邪を引く前に。

 そう決めて、伊織君の上に屈みこむ。

「おーい、青年。起きたまへ~。夜眠れなくなるよ」

 つんつんと肩を指でつついてみたけれど、伊織君は平和そのものの寝息をたてて起きる気配がない。う~ん・・・。

 このまま毛布だけかけてあげて、放置するか?別に夜眠れなくても、大体彼は今ずっと休みなわけだし困らないよね?そう私が考えていた時、伊織君の鞄などが積み上げられている隅っこに、カメラを発見した。

 日中カメラの整備や手入れをしているとは言っていたけど、あれのことなのかな。

 その重そうで高価そうな真っ黒のカメラを、私はじっと見る。

 ・・・伊織君たら、私の寝ている時を撮った。

 ・・・ってことは、お返しをしてもいいんじゃない?

 カメラを凝視する。

 うー・・・・ん。でもかなり高そうなカメラ。それに人の商売道具を勝手に触っちゃやっぱりダメだよね。

「万が一壊してしまったら、私弁償出来ないし・・・」

 しばらくブツブツと一人ごちてから、私は思いついて二階の自室へと上がる。

 そうだ、彼のカメラはやっぱり使えないけど、私のカメラなら問題ないじゃなーい!そう気がついたのだ。