「何騒いでる」

「!」

突然響いた声に驚いて振り返ると、季龍さんがいた。

い、いつの間に…?

季龍さんは私をじっと見ていて、その表情は気のせいか険しい。

でも、よくよく視線をたどってみると、奏多さんに隙間なく抱きついているところを見てる…?

「琴音ちゃん、離してくれる?」

「?」

顔をあげると、少し困った顔の奏多さん。珍しいな、奏多さんが離してって言うなんて。暁くんにはすぐ言われるけど…。

言われた通りに離れると、唐突に肩を掴まれて後ろに引かれる。

構えもなにもしてないから抵抗も出来なくて、倒れるのを覚悟して目を閉じたけど、すぐに受け止められた。

「親父と何してたんだ?」

「“お喋りしてました。楽しかったです”」

「ここちゃん話してただけらしいっすよ」

受け止めてくれたのは季龍さんで、離れようとしたけど肩を掴まれたままなのでそのまま話す。

でも、どうしてわざわざ来たんだろう。台所に来るなんてこと今までほとんどなかったのに。