「あ~!麻夏だけずるいー!」

元気な声に肩が跳ねる。視線の先にはもちろん麻琴さんがいる。

どたばた足音を響かせてやって来た麻琴さんは麻夏くんの背に飛び付いた。

「琴音ちゃん、夏休みどこか行った?」

「…」

苦笑いをしながらタブレットに打ち込んで見せる。

それを覗き込んできた麻琴さんは、ぱっと目を輝かせる。

「海!?いいなぁ!!」

「!?」

想定外の大声に驚く。でも、すぐにタブレットを引っ込めて削除した。

チラッと教室を見回すと、こっちを気にしない振りをしながら聞き耳を立てる姿が目についた。

やっぱまずい…かも。