時間さえ忘れて空を見上げていると、ふっと笑ったような声が聞こえて我に返る。

季龍さんを見れば、私を見て口角を上げていた。

「気に入ったか」

「コク」

「この辺は別荘と観光地ぐらいだから夜は暗い。山も近いから余計にな」

そっか、だからこんなに星が見えるんだ。

街中ではそうそう見ることができない星空を目に焼き付けるようにまた空を見上げる。

…私は、どれだけ幸運なんだろう。

あの闇の底のような場所から連れ出されてきて、日の光を浴びることさえ出来ないことを覚悟していたのに。

ある程度の自由を保障され、身の安全まで守られているこの状況は、どれだけ恵まれているんだろう。

こんな、のんきに空を見上げられるなんて思いもしなかった。