「琴音」

呼ばれて振り返ると、季龍さんがいて飛び上がりそうになる。

急いで手に持っていたものをテーブルに置いて向き直ると、ついて来いと言うように背を向けて歩き出した季龍さんの後についていく。

広間を出て、エントランスを通りすぎ、海に出る裏口のドアを開けた。

こんな時間に海…?

迷うことなくビーチへ出る季龍さんの後ろを追いかける。やっと立ち止まったのはビーチのど真ん中だ。

「…?」

何かあるのかな。キョロキョロ周囲を見回しても何もない。

首をかしげて季龍さんを見ると、その視線が上に向く。つられて上を見上げると、広がったその光景に息を飲んだ。

いつもなら点々と並んでいる星が、ところ狭しに並んでいる。

夏の大三角さえ分からなくなってしまうような満点の星空に息をするのさえ忘れてしまった。