どうしよう。仕方なく目を開けて、両手を握りあう。でも、温かくなるわけがない。

分かっていても、腕をさすったり手を擦ったりと気休めにしかならないことをするしかなかった。

「ッチ」

「ッ!?」

隣から舌打ちが聞こえてきた直後、腕を捕まれて引き寄せられる。

同時に肩にかけられた何か。顔を上げると、睨むような目と視線が重なって、思わずそらした。

「我慢するんじゃねぇ。寒いんだろ」

「…」

肩にかけられたのは今の今まで季龍さんが着ていた上着。密着した体からは温もりが伝わってきて、離れたくないなんて思ってしまう。

でも、季龍さんに迷惑をかけるわけにはいかない。

かけられた上着を取ろうとするとその上から肩を抱かれ、離れることもできなくなる。

「我慢するなと言っただろ。大人しくしてろ」

「…“ありがとうございます”」

「…」

厚意に甘え、お礼を言うと季龍さんの視線はまた外へ向く。

それでも、肩に回った手はそのままで、冷えた体は少しずつ熱を取り戻していく。

同時に去ったはずの眠気が襲ってきて、いけないと分かっているのに意識を手放してしまうのに時間はかからなかった。