「とにかく行くぞ。もう待ってる」

「!?」

それはいろいろ考えてる場合じゃない。

奏多さんと暁くんに連れられて玄関に出ると、唯一私のくつだったローファーではなく、底がペッタンコのサンダルが置いてあった。

明らかにこれを履けと言わんばかりに置いてあるので遠慮なくそれを履き、手を差し出して待っていてくれる奏多さんの手に自分の手を重ねる。

永塚の敷地外に出る時はいつもそう。学校に行くときも季龍さんに手を捕まれる。

手を振り払って逃げないようにだろうけど、初めての時はドキドキした。今は大分慣れて手を繋ぐ抵抗もそんなにない。

奏多さんと手を繋いだまま玄関を出て、暁くんが鍵を閉める。…お留守番とか、いないの?まさかみんなで行くの?

混乱しながらもそれを待ってから門を出ると思わず唖然。

大型バスが2台。片方のバスはほとんどの窓にカーテンがしてあって、中の様子が見えない。