「もう寝ろ。おやすみ」

「おやすみなさい、お兄ちゃん」

微笑んだ梨々香は立ち上がり、部屋を出ていく。

広い部屋で1人残った季龍は深く息を吐き出し、前髪をかきあげる。

これからしなければならないこと、守るために気を張らなければならないこと。

そんなことが次々に浮かんでは思考を掻き乱していく。

「…はぁ」

ため息がやけに後を引く。

この道を選んだのは自分自身。それを受け入れ、共に着いてきてくれた仲間がいる。

その仲間を裏切るわけにはいかない。

だから、この重圧に負けることも、屈することも許されない。

顔を上げる。立ち止まっている場合ではない。立ち止まれば負ける。守らなければならないものたちを守れなくなる。

立ち上がり、広間の電気を消すとその場を後にした。

客観視end