「思い出したとき、お前はどんな判断を下すんだろうな」

「なんですか、それ」

「さぁの。梨々香、はよ寝るんだよ。おやすみ」

「おやすみなさい」

季龍の言葉をさらりとかわした源之助は、ずっとおとなしく黙っていた梨々香に笑いかけると広間を出ていく。

その後に田部が続き、広間には3人だけが残った。

気まずそうな顔でうつむく梨々香に対して、季龍も困ったような顔で声をかけられずにいた。

そんな空気を察して、伸洋は静かに広間を出ていく。

兄妹2人きりの部屋なのにどこかよそよそしく、静まり返ってしまいさらに話しづらくなっていく。

「お兄ちゃん、私…」

「悪かった。守るつもりが、逆に不安にさせてたんだな」

「ッ…うん」

嘘はつかない。梨々香は両手を胸の前で握り合いながらも頷く。

そんな梨々香に季龍は目を細め、そっと頭を撫でた。