‐客観視‐

琴音たちが部屋を出た瞬間、先ほどまでの和やかな雰囲気は消え失せ、張り詰めた空気に包まれる。

厳しい視線の先は、たった今夕食を食べ切った青海だ。

「青海、お前はどっちだ」

問いを投げたのは季龍自身。主語の欠けた問いかけでも、青海は表情を崩すことはない。

季龍や伸洋、奏多たちにとっては元いた場所で共に過ごした仲間。だか、仲間であっても簡単に信用できるほど彼らは自分たちの立場を安易に考えてはいない。

疑うことから始めなければ、命に関わることを誰よりも彼ら自身が分かっているのだ。

そんな仲間たちからの疑いの視線を一身に受けた青海は、臆することも悲しむこともなく、まっすぐ季龍を見つめたまま、姿勢を正すとその頭を深く下げた。

「私の心はいつ何時も、季龍さんと梨々香お嬢の側にあります」

「…証明しろ」

季龍の合図で青海の前に出されたのは大量の氷と小刀と木製の板、そして真っ白なサラシ。

「はい」

それが意味することを青海は分かりきった上で自身の左手を氷に当てる。