「お嬢、ここちゃんとお風呂入っておいでよ。なんなら一緒に寝ても…」
「私は残る!」
伸洋さんの言葉を遮った梨々香ちゃんは、はっきりと部屋に響き渡る声で宣言する。
でも、その宣言に1番表情を険しくさせたのは季龍さんだ。
「梨々香、お前が聞く話じゃねぇ。早く寝ろ」
「ッ…お兄ちゃんはいつもそう!なんでも隠して、私はなにも知らない!!そんなの嫌!お兄ちゃんに守ってもらったまま大人になるなんて嫌なの!!」
立ち上がった梨々香ちゃんは、まっすぐに季龍さんを見つめて叫ぶ。
そんな梨々香ちゃんの姿に季龍さんは驚いたように目を見開いた。
多分、今まで梨々香ちゃんがこんな風に組のことで声を荒らげることはなかったんだと思う。
ちゃんと話したいと言っていたけど、はっきり思いを口にしただけでも変わるんだと思う。
それを証拠に、季龍さんの表情は険しいけどどこか迷いがあるように見える。
沈黙が落ちる。その沈黙を破ったのは伸洋さんのため息だ。