暁くんを見上げると、少しだけ顔が赤い。…私のためにわざわざやってくれたんだ。

その事が嬉しくて、思わず笑顔になる。

「“ありがとうございます、暁くん”」

「…別に。早く持てよ!」

照れ隠しなのか、押し付けるように弁当を渡される。かわいいねこのイラストがたくさん書かれた保冷バックはかわいくて、暁がこれに入れてたんだって思うと何となくかわいかった。

「暁ー!水筒!!」

「あ」

「?」

大声と共に、水筒を掲げて現れたのは奏多さん。暁くんは、水筒のことはすっかり忘れていたのか、らしくない間の抜けた声を出した。

「はい、琴音ちゃん。頑張ってね。こっちのことは気にしなくていいから」

「…“はい。ありがとうございます、奏多さん”」

「…どういたしまして。早く帰ってきてね」

何とか口の動きを読み取ってくれた奏多さんは笑顔で頭を撫でてくれた。