「ことねぇ、開けたら走るよ」

「コク…」

梨々香ちゃんはすぐに反対側の襖に移動し、取っ手に手をかける。

応戦するのはダメ、すぐに逃げて伝えることを優先するようだ。

相手が分からないけど、どたばたという足音は聞こえない。でも、行けという指示を出されたなら、逃げ切れる可能性が高い。

深呼吸をした梨々香ちゃんは、次の瞬間襖を開け放ち、廊下へ飛び出す。

それに続いて廊下に出ると、数メートル先で立ち止まったままの見たこともないような巨人が視界に入り、思わず2度見してしまう。

な、なにあれ…人…?

そう思ってしまうほど、不可解な姿をしている。

「ことねぇ!」

「!?」

いけない。すっかり我を忘れてた。

梨々香ちゃんが先導していく後を追いかける。