「琴音、めし作れるか」
「コク」
「…んな顔すんじゃねぇよ。大丈夫だ。若自ら動いてんだ。すぐ片がつく」
暁くんに乱暴に頭を撫でられる。
普段ならこんなことしないのに、本当に心配されてるんだ。
弱い女の子と、同じように。怖かったんだろうって、気遣われて、守られてる。
…そんなの、私の立場じゃないのに。
もやもやしたまま部屋に戻り、着物に着替えるとすぐに夕食の準備を始める。
でも、暁くんはどこか上の空で、よく手が止まってしまう。
気になるんだよね。でも、季龍さんの命令を守ることを優先してそれを抑えてる。
…でも、それだけ深刻な事態である可能性が高いのかな。これだけ緊張状態にさせるくらいには…。
こんな状態で、隠される方が怖いのに。いざというとき、動けないようではいけないのに。
でも、そんなこと言う資格はなくて、与えられている役目をこなすことしか私には出来ないんだ。


