「琴音と梨々香は別室に置いとけ。暁、見張れ」
「分かりました」
不意に聞こえた季龍さんの声に顔を上げる。
フルスモークになってる窓からは季龍さんの様子は見えない。
でも、こんなときまで気を使われているのだと、守られている立場なのだと嫌でもはっきりした。
私は、守られる立場なんかじゃ、ダメなのに。
助手席の窓が閉まって、車は走り出す。その行方を見守っていると、捕まれていた手を引かれ、屋敷の中に入っていく。
「暁、琴音ちゃんのこと任せるから」
「分かってます」
奏多さんも玄関に入るなり私の手を離して、走って行ってしまう。
止めてはいけない。望まれていないのに、動いてはいけない。
でも、守られることが苦しかった。


