「なにやってる」

季龍さん、いつの間に女子の大群から抜け出してきたんだろう。

そして、なぜか少し怒っている様子。首をかしげると、眉間のシワが深くなる。なんで!?

「答え、書いてもらってるだけ」

会話に割り込んできた麻夏くんは、怒った様子も焦った様子もなく、ただ淡々と事実を口にする。

季龍さんの視線を受けても、その表情は変わらなかった。

「琴音に解かせなくても書いてあるだろうが」

「途中式ないし。葉月さん、頭良さそうだからわかると思って頼んだだけ」

「あ?」

「なに。葉月さんに話しかけるのにいちいち永塚くんの許可、いらないじゃん。なんで怒ってんのか意味わからない」

季龍さんに真っ正面から歯向かう麻夏くん。怖くないらしい。季龍さんの様子を見て、咄嗟に体が動く。

腕を上げた季龍さんの目は完全に獲物を狩る猛獣のように鋭くて、その標的は間違いなく麻夏くんだ。