結局あの後メイド長と旦那様にそれはそれは怒られて、嫌な記憶と共に封印していた。

でも、あのとき、お父さんにヤクザだと教えられても全然怖くなかった。また会えるかななんて、思うくらいに気にしなかった。

それがなんでだったのかは自分でも分からない。でも、思い出した今でも、季龍さんたちを怖いと思うことはなかった。

「琴音ちゃん、入るよ?って、こら。早く寝る」

ノックの後に開いた襖。スウェット姿の奏多さんに、ポカッと頭を叩かれる。

奏多さんはヤクザ。暁くんも、伸洋さんも。森末さんたちも。ここにいる人たちはみんな、ヤクザ。

分かってる。でも、怖いとは到底思えないんだ。

「ほら、寝れないの?手繋ぐ?」

「コクッ」

布団を引いてくれた奏多さんが差し出してくれた手を掴んで、布団に潜り込むと目を閉じる。

季龍さん、覚えてないんだよね。思い出してくれるかな。

そんなことを思いながらも、遠くなっていく意識に気持ちよくなって、温かい夢を見た気がした。