恋する人、溺愛の予感



帰りの車の中で、これまでのいろいろな話を先生から聞いた。

先生って、昔はすごく女遊びが激しかったらしくって、私の事を上林賢太郎先生に相談したら、当時上林先生が付き合ってた桜にまで話がいって、もちろん私の大切な友人の桜は猛反対したらしくって。

その桜から許しを得るまで2年。

桜から許しを得るまでは、上林先生も許さなかったらしい。

「酷いよなあ、あいつ、俺と幼馴染みだよ?
旧知の仲なんだよ?親友なんだよ?」

「あははは。」

なんとも言えなくて笑ってごまかす。

それにしても、

「上林先生、私の事嫌ってるんだと思ってた…。」

「は?どうして?」

「なんとなく、周りの皆んなと同じような目だったから。」

「…海ってさ、完璧すぎるんだよ。」

「へ?」

「完璧すぎて隙がないから、近づきにくいだけで、誰も嫌ってなんかないよ。
寧ろ、皆んなから尊敬されてると思うけど?
現に、賢太郎だって海の事、同じ職場の人間として大切に思ってくれてたんだろ?」

「尊敬?
…って私が?
そんなまさか!」

「そうだよ。」

なにいってんの?みたいな口調だったから、思わず言ってしまう。

「なんで私の事を分かったふうなんですか?」

言ってしまった。

そう思って後悔した。



「だって、俺だって完璧すぎるから。」

でも、帰ってきた言葉は発想の斜め上をいっていて。

「へ?あははは。」

思わず吹き出してしまった。

「あははは、そりゃ、先生にも分かりますね。
私たち、似た者同士だったんですね。
私が言ったら失礼か。」

「そうだよ、似た者同士だから惹かれたんだ。
海はそのままで十分。有り余るくらい素敵な女性だ。困った時は俺だけを頼りなさい。完璧な海が頼れるのは完璧な俺だけ。」

「…はい。」

なんというナルシスト…。