「じゃあ、言い方変える。」

へ?

俯いてた顔をあげる。

「俺は、海のことがほっとけないから4年も片思いしたんだ。」

「片思い…?ってか先生今海って…。」

「ああ、皆んなの見ていないところで努力しまくって、普段は無愛想なくせに患者やその家族に対しては心からの笑顔で親切に対応してるところ、周りを気にしていないようで気遣いは忘れないところ。
でも、どこか自分を卑下してるところがあって。
海の全てに惚れた。
海を守ってやりたいと、そう思った。」

「そんな…。
嘘…。」

「近づきたいと思って色々画策したんだが、一向に海と2人きりになれなくて。」

「あ、それは…。」

私が言いかけると、ニヤッと笑った彼は続ける。

「たぶん、俺避けられてるか、海がこういうの経験ないのかどちらかだろうと思ったから、2人きりになれたら思いを告げようと思った。
長期戦覚悟の上だったよ。
おかげで4年もかかった。
確実にそばにいて欲しいから常にこいつ持ち歩いてたし。」

そういって視線を落とす彼の目先にはさっきからずっと光っているダイヤモンドが埋め込まれた指輪が入っていて。

暗闇でよく目を凝らさなきゃ見えないくらいなのに、ケースがボロボロになっているのが目に入る。

「これでも振る?」

そうやって首をかしげる彼。



涙でぼやける視界を振り払うように首をふった。


「私も、先生の事が大好きでした。
今も、大好きです。
よろしくお願いします。」

「ん、よろしくね。」


そういって目の前に出された彼のしなやかな左手。

「左手ちょうだい。」

「…はい。」

かれのそれに手を重ねると、指輪をはめてくれた。

その指元に唇を添えられ心が跳ねる。


「おいで?」

「…はい。」

先生の胸元におそるおそる身を寄せると、ぎゅっと抱きしめてくれる。

「ツンツンしてる普段の海ちゃんも可愛いけれど、デレて甘えてくれる海ちゃんも最高に可愛い。」

そんな事を耳元で囁かれ、きゅんと心が鳴る。

のに、

「では、もうこれからは抱きつきません。」

自分で抱きつくというワードを出しておいて顔まで真っ赤になってるくせに、ここまできても素直になれない私。

ううう、私の性格恋路を邪魔するな!

「あ、ツンツン海ちゃんに戻っちゃった。
どうしたらデレデレ海ちゃんになるの?」

「知りませんし、なりません。」

「つまんない。
キスとかしてみる?」

「結構です。」

そういって車の方へ歩き出す。

ああ、なんで素直になれないのかな。

ごめんなさい。



自分の気持ちを反映してくれない自分の身体に落ち込みながらトボトボ歩いていると、手を引かれて振り向かされた。



顎を掴まれ落ちてきたキス。



私の心の声をちゃんとひろってくれた。



彼と一緒になれて、なんて幸せなんだろう。



慣れないキスに足元がふらつき、そのまま彼の胸へ寄りかかる。

彼の手が背中に回され、再び抱きしめてくれた。

「これで正解だよね、デレデレ海ちゃん?」