12月になった。
いつもと変わらない放課後。
なんら面白くもない道を佳奈と二人で歩く。
ふと上を見ると、もうすっかり日も落ちて、空には星が浮かんでいる。
青黒い空を下界の光が照らし、夜空は少し霞んで見えた。
冬だなあ、とマフラーに顔を埋める。
「それでねっ!」
隣を歩いている佳奈が髪を揺らしながら話をふってくる。
いつも学校から駅までの間を佳奈の話を聞きながら下校する。
駅からは別々だけれど、私は生活の中で佳奈と下校する時間が好きだった。
佳奈の話を相づちを打ちながら聞く…、それだけのことだけど、なんだか心地がよかった。

「彩月、またねー!」
駅に着き、改札をくぐると佳奈が手をふってくる。
子供のように、手を目一杯伸ばして振ってくれるのを見て自然と笑みがこぼれた。
「またね」
と、私も佳奈に手をふりかえすと、佳奈は満面の笑みを浮かべ、階段を上っていった。
佳奈が見えなくなってから、私は目の前にとまっている電車へと向かう。
この駅は、私の通う高校の生徒たちが使うので、車内は私と同じ制服の高校生たちがたくさん乗っていた。
これから混むだろうことが予想できたので、乗った方とは逆のドアの方へと向かう。
当分こちらのドアは開かないのでもたれかかった。