「あ、出てきた」


 女子トイレから、チィに支えられて香田さんが出てきた。

 ふらつく足取りが不安で、暗い考えを振りほどき駆け寄る。


「大丈夫?」


 腕を伸ばし、細腕のチィから支えを代わる。

 呼吸は少し安定したようで、一定のリズムを刻んでいる。

 香田さんは俺の腕を精一杯掴み、


「……ぁりが、とう」


 消えそうに小さな声で、礼を言った。


「お礼言われるような事、出来てないから」


 そう言ったらゆるく首を振り、


「すごく……心強かったよ。ありがとう」


 俺の顔を見上げ、一生懸命言ってくれた。


 最初にチィが言ったとおりだ。

 すごく、いい子じゃないか。


 俺はなんだか、泣きたくなった。