「言うなよ?」


 声が自然と低くなる。

 智も俺の怒りを感じたのか、おとなしく頷いた。


 口を塞いでいた手をそっと外しても、智は言い掛けた内容を喋ろうとはしなかった。


「……まぁ、お気になさらず」

「……まぁ、みんな色々あるよね」

「そういう事」


 俺はパンを頬張り、おもいっきり咀嚼し、ごくりと飲み込んだ。