肘をついたまま、船も漕がず石像のように固まって眠る人間は珍しいだろう。


「いつものことだから。俺のことも榊じゃなくて、ハユでいいよ」

「あ、そっか。うん、じゃあそうする」


 首をこくこくと上下に動かしているところを見る限り、納得したようだ。


 俺は再び智の方を向く。


 そして耳に近づくと、小さく″魔法の呪文″を呟いた。