何故だかすごく悪いことをしている気分になる。 俺は極力音を出さないようにひとつ取り出し、一瞬の隙を見て口に放り込む。 食べ慣れた刺激と味が、口腔と鼻孔を通り抜ける。 俺の目蓋を押さえ付けていた眠気がゆっくり、諦めたように遠ざかっていくのを感じた。 「篠沢、ありがとう」 小さく彼女を呼び、再び低い位置でやりとりする。 篠沢はケースを受け取ると、少し不服そうにぽつりと言う。