おみくじは当たらない

「そんなこと言われても」


あたしはグラスに残っていたアルコールを飲み干した。
不破くんはあたしがいまの部署に異動したことで親しくなった人。
それまでは接点も無かったから、顔も知らなかった。
話しやすい人で、周りに気遣いも出来る人。


「同い年でしょ」

「うん」


うちの会社は新卒の採用を行っていない。
だから同期でも年齢はさまざま。
同い年って、実はあまりいなくて。
不破くんの年齢がわかったときには、すごく嬉しかった。


「好きじゃないの?」


あやこがストレートに訊いてきた。
あたしはごまかそうとグラスに手を伸ばすがさっき空にしたばかり。
小さくため息をついた。


「不破くんがあたしのことタイプじゃないんだよ」


自分に言い聞かせる。
そりゃ、あたしだって…。
不破くんとは仲がいいと思う。
勘違いしたくなるし、うぬぼれたい。


「それに。不破くん社内恋愛しないんだって言ってた」


だから。
あたしの可能性は無い。


「なんで?」


あやこは当たり前のように訊いてきた。
そんなの、あたしも知りたい。


「別れたら気まずいからじゃない?」


あたしはこの話をもう終わりにしたくて、店員さんをつかまえて、アルコールのおかわりを注文した。