見回りからの帰り


〜♪

不在着信の知らせ


相手の名は
《一華-イチカ-》


やれやれ、これから帰ると
言うのに…



『一華のやつこんな時間に何の用だ
弘樹、悪いが一華の所に行ってはくれぬか?』


弘樹-ヒロキ-とは私の懐刀でありながら
運転手として仕えている


此奴は
実に有能な男だ



「一華様の所にですか…
今日は、ゆっくり休まれた方が…
明日は、神崎組本家にて明紅連合会の組長等が集まります故….….お身体に障ります…」


まったくこの男も心配性だ

こうも心配されるとは
私も舐められたものだな


『弘樹、心遣い感謝するが
それは、私を否定するのと同じことじゃ
行くと言ってるだろう?
私の命に従ってくれぬかの?
一華の元へ向かってくれ。会社に居るだろうから』

「ッ………申し訳御座いません!
仰せのままに…」



それから、私は一華に電話をかけ直した


プルルル…


『…もしもし一華、連絡遅くなってすぬな
今、そっちに向かっているから…
まだ、会社に居るのだろう?』



《….….》



ん?返答がない


『一華?』


名前で呼びかけても返答なし



….….….….
しょうがない…
この手を使うか


『一華?一華の好きなシュークリーム
買って行こうと思うのだか……』




《…….….遅い、なかなか電話に出ないから心配した!早く来て……シュークリーム忘れないでよね》


よかった口を聞いてくれて

昔から甘いものに弱いからな一華は…


成長して、口が聞けるようになり利口になったかと思えば少しばかり憎たらしい部文もある。それでも
“妹”というのは可愛いものだな



電話を切った後、コンビニに寄り
シュークリームをあるだけ買い


暫く、車に揺れること20分


ネオン輝く街と違って
此処は落ち着いた街



そして今、目の前にある高層ビル

このビル全てを仕切っているのが

我が妹、御子柴 一華なのだ


高層ビルなだけあって


事業も沢山ある


その全てを仕切っている社長である一華を尊敬する


私もこの会社の会長であるが

一華は、私に負担をかけたくないと

自分が高校を卒業したら
全て背負うと言った

その言葉通り私の負担も随分減った

私と一つしか変わらないというのに
こればかりは妹に頭が上がらない


ロビーを抜け一華が居る元へ
最上階の部屋へ向かった




コンコン…….….



『美桜だ、入るぞ?』



ガチャ



扉を開けた瞬間


一華が抱きついて来た



「お姉ちゃん!!」



その勢いに負けて後ろへよろけてしまった。支えきれず転ぶと思ったが


そんな私と抱きついたままの一華を
受け止めてくれたのが、側にいた
弘樹…ではなく


葉月だった



「っと…危ね…大丈夫か?ねえさん」



“ねえさん”



そう、葉月は私の弟

私、一華、葉月は三兄弟の中


両親が事故に合い亡くなってからというもの3人で支えあってきて


無くてはならない存在なのだ





「ねえ、ちょっとお姉ちゃんの心配して
私の心配はないわけ⁈」


「誰がお前の心配なんかするかよ!
だいたい感無しに姉さんに抱きつくなよ
危ねえだろ!!」



あ、始まった喧嘩が
相変わらず仲が良いのう

2人は双子だから、こうやって
喧嘩してるのがお似合いだ


弘樹は2人の喧嘩をどうすればいいのかオドオドしている

面白い…



一向に終わらない妹弟喧嘩

….….….….….….。

さっき買ったシュークリームでも
食べようかな、

そういえば今日、何も
食べてなかったな…


袋を破りシュークリームを食べようとした瞬間、視線を感じた




「お姉ちゃん!先に抜け駆けなんてずるい!!私も食べるー!」


「ちょっ、まて!俺も食べたい!」


『もう、よいのか?喧嘩は?
なかなか見ものだったぞ?』


「「….….….….見世物じゃない」」


ああ、可愛い…
2人して顔を赤く染めおって
愛くるしい……


『フフ…弘樹、コーヒーを持ってきてくれるか?お主も一緒に食べよう』


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今だけは、この子達の前では、自分が普通の人間でありたいと、

極悪非道で闇に生きる人間ではなく、陽の光を堂々と一身に浴びる事ができるそんな人間でありたいと


刹那に願ったのであった