屯所にて・・・



「梅の花~一輪咲いても、梅は梅~。

ぷっ、当たり前じゃないですか。

ほかに何が咲くんですか・・・あははっ!」

屯所の庭で、一冊の詩集を片手に

副長助勤沖田総司は悪だくみをしていた。

くすくすと、その本に書かれたものを読んでは

馬鹿にして笑っている。

「ん?総司か、何してんだ?」

と、そこを通りかかった長身の男

沖田と同じく、副長助勤の原田佐之助。

「あ、佐之さん!

ねえ、これどう思います?」

「なになに?えーっと、

春の草 五色までは 覚えけり?

春の草っつたら七草のことか。

あと二つぐらいがんばれよ。

ガキでもいえるぞ。なぁ、総司」

「悪かったな・・・覚えが悪くてよぉ。」

本をのぞき込む二人の後ろからの威圧

「げっ!土方さん!!」

怒りをあらわにしたまま現れたのは

壬生浪士組副長の土方歳三だった。

「あ~らら、鬼にもう見つかっちゃった。」

「そっ、総司・・・もしかしてこの句集、」

予想しつつ沖田を覗うと、

あっけらかんとした顔で答えた。

「うん!土方さんが書いたやつ。」

原田の顔は真っ青になり、反対に

土方の顔は真っ赤になって怒鳴りだす。

「総司!!てめぇは何度言やぁ分かるんだ!

とっとと返しやがれ!!」