昭に言われたことが胸をざらつかせているのが嫌で優に会いたくなったけど、優は家の用事があるとかで会うことはできなかった。

 憂鬱な気分で家に帰ると、すぐに心晴が訪ねてきた。気のせいか、心晴も元気がなさそうに見える。目が真っ赤だ。

 お菓子とジュースを用意し私の部屋に通したけど、心晴はいつもみたくお菓子には手をつけず暗い面持ちでうつむいていた。

「心晴、何かあった?大丈夫?」

 私も私でモヤモヤしていたけど、自分のことなどどうでもよくなるくらい心晴のことが心配になった。こんなにおとなしくて静かな心晴を見たのは、彼女の父親の葬儀以来だった。

「……あのね、あたし、お母さんの仕事の都合で遠くに引っ越さなきゃいけなくなったの。もう、ひなたと一緒に年越しそば食べられない」

 ポツリと言い、心晴は大粒の涙を流した。私と会う前、一人で泣いていたの?

 心晴とは毎年年末には年越しそばを食べて、あけましておめでとうを言い合っていた。約束していたわけでなく、幼なじみとして自然とそういう習慣ができていた。

 物心ついた頃からそばにいてくれた心晴の引っ越し。その事実に、私の心はそれまでにないほど暗く曇っていった。