「って言ったら、どうする?」
 
 はい?

 思わせぶりな沈黙の後、凜翔(りひと)はイタズラな瞳でそう訊いてきた。私は困惑した。

 こんな時に思い出すのも癪(しゃく)だけど、こっちの反応を試すみたいな凜翔の表情が昭(あき)に似ていると思った。

「凜翔、わけわかんない。結局、料亭デートしたってことでしょ?」

「さあ、どうでしょう?」

「どういう意味?」

「どういう意味かな?俺にも分かんない。コレけっこうおいしいよ。ひなたもほら」

 口元に舞茸のバター焼きを持ってこられ、反射的に食べてしまう。初めて食べたけどおいしい!その後、次々と肉を口に運んでくれる。我慢して食べないようにしていた分、肉のジューシーさに体がとろけそう。じゃなくて!

「ちょっ、凜翔!今のって……」

「ねえ、ひなた」

「こ、今度は何?」

「この後、何か用事ある?」

「別にないよ。家に帰るだけ」

「じゃあさ、ドライブ行かない?」

 ドキッとした。焼肉を一緒に食べただけでも現実味がないのに、その後にドライブだなんて、特別な時間って感じがしてしまう。

「ごめん、行けないよ。私まだ車持ってないんだ。免許は大学入ってすぐに取ったんだけど」

「車出すよ。こっちから誘ったし当然」

「凜翔、もう車乗れるの?」

「あ、今、サラッと子供扱いしたー?」

「し、してないしてないっ!」

 向かい合って座っている中、凜翔がむくれた顔をしてこっちに身を乗り出してくるから緊張しキョドってしまった。