「ひなた、あんまりお腹すいてない?」

「そ、そうみたい。お昼遅かったからかな〜?ははは…」

 ウソです!細々とサラダを食べながら、私は肉を食べたくて仕方なかった。見かけによらずパクパク肉を食べる凜翔がうらやましいし、意外だった。

「凜翔お腹すいてたんだね。いつもそんな感じなの?」

「うーん。いつもはもっと少ないけど、ひなたといるからかな」

「私?」

 相手の食欲を増加させる特殊設定はないはずだけど。

「ひなたといると普段よりご飯がおいしく感じて、どんどん食べちゃう」

「なるほど!そういう意味だったんだ。初めて言われたよ」

 凜翔の褒め言葉は、ひとつひとつくすぐったい。自分でも気付かない細部を柔らかい羽でなでられているような感覚。

「でも、さすがに昨日はいっぱい食べたでしょ?」

 照れ隠しのため、昨日凜翔がお客さんと高級料亭で待ち合わせをしていた時のことを、話題にした。

「ううん。あそこの料理は食べてないよ」

「え?でも、待ち合わせ場所だったんだよね」

「ううん。昨日は誰とも待ち合わせしてない」

「え?」

「ごめんね。自分都合でひなたにウソついた」


 凜翔はうかがうようにジッとこっちを見つめる。心の奥まで見透かすような色っぽい視線に、心を丸裸にされそうな気持ちになった。

 どうしてそんなウソをーー?