凜翔はなぜ、彼女でも友達でもない私に優しくしてくれるんだろう?

 買い物なんて時間のかかる面倒事に付き合ってくれたのが凜翔のためって、どういう意味?忘れてと言われても無理だ。凜翔の言葉が頭の中をグルグルする。

「お腹すいたし、そろそろ帰ろうかな」

「じゃあ、ここでご飯食べてこうよ。帰り遅くなったら送るし」

「でも……」

 断る理由が浮かばず言葉につまった。帰ると言ったのは凜翔と離れるためだった。でも、半日近く買い物に付き合ってくれた人にそんなこと言えない。

「俺といるの嫌だった?気付かなくてごめんね」

 捨てられた子犬のようにしょんぼりした顔でそう言われたら、他に選択肢なんてない!

「ううん!そんなことないよっ。今日付き合ってくれたお礼におごらせて?ね!」

「嫌がられてたんじゃなくてよかった」

 そう言い笑う凜翔を見て、こっちまで嬉しくなってしまった。

 私達は、ショッピングモール内にあるバイキング形式の焼肉店に入った。肉はもちろん、野菜や飲み物も好きなだけ注文できる。

 席に着いてハッとした。優の時はそういうことに気を遣わないから好きな店に入って食べたいだけ食べるけど、凜翔のような完璧男子を前に、食欲旺盛なところなんて見せられない。