凜翔(りひと)の顔を見れず、うつむいた。

 これじゃあ、まるでヤキモチ妬いてるみたい。凜翔との初デートは楽しかったけど、別に好きとかそんなんじゃないのに……。

 いたたまれなくなり席を立とうとすると、凜翔が尋ねてきた。

「彼氏と何かあった?」

「べ、別に何も……」

「そう?ならいいけど」

 いいけどと言いつつ、凜翔は心配そうな顔をやめない。私は私で、平気なフリして残りのミルクティーを口にする。さっぱりした甘さに、次第に冷静さを取り戻した。

 そうだよ、落ち着け、落ち着くんだ。昭(あき)から変な話を聞いたり、優(ゆう)と揉めたりで、今日は異常に疲れてる。凜翔に苛立ったのはそのせい!単なる八つ当たりだよ。謝らなきゃ!

「あのさ、ごめ……」

「ここへ来たらひなたに会えそうな気がして。そしたらホントにいるからビックリした」

「え……?」

 私のごめんなさいを遮るように、凜翔は言った。

「仕事じゃなかったら、このままひなたとデートしたいな」

 柔らかい凜翔の笑顔に、ほっこり癒される。初対面の時からそうだった。精神面は大人なのに、そういうところだけ幼い。

「ありがとう。そんな風に言ってくれて」

「よかった、ひなたも笑顔になれたね」

 ホントだ。凜翔につられて笑ってるし、さっきまでのイライラがウソみたいに消えていく。今なら心の底から謝れると思った。