「私達、こうやって一緒にカフェ居るくらい仲良くもないと思うけど。好きにしたら?」

「ありがとう。ひなた、これ食べる?」

 わざと冷たい対応をしたのに、凜翔は気を悪くした様子もなく穏やかな感じで自分のチョコタルトを私の方に差し出した。よりにもよって私の好物を、なぜ……。引っ込んだ涙が、また溢れそうになる。

「この前映画館でチョコブラウニー食べてたから、そういう系好きなのかなと思って。もしかして違った?だったら他の頼んでくるよ」

「違わなくないけどっ……」

「けど…?」

 言葉の続きを促すように、凜翔は私の顔を覗き込んでくる。本気でこちらを気遣うようなその表情が、より私の気持ちをかき乱した。

「営業時間外に優しくしなくていいよ。今後レンタルする気ないし、無駄でしょ?」

 どうしようもない。わざと感じの悪い言い方をしてしまう。むしょうにイライラした。凜翔はこれから女の人とデートをする。その事実に。