静かになった車内に、悲しげな優の声が満ちた。

「昭とそんな話してたんだ……」

「違っ…わなくないけど、今日休憩がかぶって、たまたまそういう話になって……。深い意味は全然なくて!」

「話すこと禁止するつもりはないよ。昭とはバイトも学校も一緒なの元から分かってたし、それを承知で告白したんだから」

「……」

「悲しいのは、ひなたが俺より昭の言葉を信じてるってことだよ」

「そういうつもりじゃ……!」

「分かってるよ。彼氏のそんなウワサ聞いたら普通じゃいられない、ひなたは悪くない。でも……。ひなたはやっぱり、心の奥で俺より昭のことを信用してるんだと思う」

「そんなことない!もう別れてるし!」

 精一杯否定したけど、優は何か言いたげに唇を噛みしめ目を伏せた。そして再びエンジンをかけハンドルを握ると、私の自宅方面に向けて車を走らせた。

「勝手なこと言って悪いけど、こんな気持ちでいてもひなたに嫌な思いさせるだけだから、今は一人になりたい」

「……私も、ひどいこと言ってごめん……」

「ううん。ひなたは何も悪くないよ」

「……っ」

 家に着くまで、私達は無言だった。言うはずだった別れのセリフも出てこなかった。